選挙解体新書

選挙の役に立つ研究・分析を紹介します。

英国民の学歴があと少し高ければ、EU離脱はなかったかも。

 

 グローバリズムとナショナリズム。保守とリベラル。いま世界中で、政治的な志向が2極化し、社会を分断しかねない危機が到来しています。イギリスで行われたEU離脱をめぐる国民投票では、国民の意見が真っ二つに分かれ、EUからの離脱が選択されました。この結果は、多くの専門家の予想に反する衝撃的な結果だったため、未だに多くの議論を巻き起こしています。なぜEU離脱が選択され、どのような人がEU離脱に賛成したのでしょうか?

 

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 今日のエントリーでは、イギリス国民の学歴・性別・年齢・失業など複数の要因を統計的に分析し、EU離脱の一番の原因を明らかにした研究を紹介します。統計的な分析の結果、「学歴」が、選挙結果を大きく左右したことがわかりました。どれだけ大きな影響かというと、もしイギリス国民の大卒者の割合がたった3%だけ高ければ、EU離脱は選択されなかったかもしれないほどです。

 

 統計的な手法でBrexitに与えた要因を分析

 

 イギリス中部にあるレスター大学の研究者は、選挙管理委員会が公表した各地域の選挙結果やその地域の学歴・性別・年齢・失業率等のデータを網羅的に収集しました。その上で重回帰分析といわれる統計手法によって、複数の要因の中からEU離脱選挙の投票結果に最も大きな影響を与えた要因を探し出しました。

 

 「学歴の高さ」が離脱と残留をわけた

 分析の結果、様々な要因を考慮した上でも、「学歴」が選挙結果に最も強い影響を与えていました。高い学歴(学士レベル以上)の割合が多い地域ほど、EU離脱に賛成しやすい明確な相関が見られたのです。

 

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図の説明:イギリス各地域の高学歴の割合(縦軸)と、その地域で「残留」に投票した人の割合(横軸)。

  

 さらに著者は一歩踏み込んだ分析をしています。選挙結果が逆転するためには、どれくらいイギリス国民の学歴を向上させればよいのか、ということを調べたのです。著者の分析によると、イギリス主要地域で、大卒の割合がたった3%上昇するだけで、EU残留が選択されていた可能性があるといいます。

 

政治の分断は、学歴の分断かもしれない。 

 

 政治的な課題に対して国民の意見が2極化し、社会が分断化する危険が世界中で懸念されています。また、高学歴の親の子が高学歴になりやすく、低学歴の子が低学歴になりやすい、「学歴の固定化」も世界中で報告されています。

 米の高学歴層、巧みな格差固定化の企て 築く見えない壁:朝日新聞デジタル

「東大生の親」は我が子だけに富を“密輸”する | プレジデントオンライン | PRESIDENT Online

 

 今回紹介した研究結果が示しているのは、学歴の固定化が政治的な分断を生み、社会を不安定化してしまう危険性です。

 

 さらに、高い教育へのチャンスが地域によって制限されている危険性もあります。例えば、鹿児島県の大卒者の割合は35.8%であるのに対して、東京都では72.7%です。このような、地域による学歴の格差は、将来的にアメリカの赤い州・青い州ように地域間の政治的な分断につながる可能性があります。平等な教育機会のアクセスは、社会の分断を防ぐためにも必要不可欠なのかもしれません。

 

参考資料

Aihua Zhang. New Findings on Key Factors Influencing the UK’s Referendum on Leaving the EUWorld Development, 2017; DOI: 10.1016/j.worlddev.2017.07.017