選挙解体新書

選挙の役に立つ研究・分析を紹介します。

選挙時のネット広告は、ほぼ効果がないことが判明

 インターネットの普及に伴い、選挙戦略におけるネット広告の重要性が世界的に高まっている。例えば、2012年のアメリカ大統領選挙では、オバマ陣営とロムニー陣営の両方は、全ての選挙広告の費用のうち、25%をネット広告に使用したと試算されている。

 

 では、ネット広告はどれくらい効果があるのだろうか?

 

 2014年に発表された研究によると、ネット広告は選挙にほとんどプラスの効果を持っていないかもしれない。カリフォルニア大学とコロンビア大学の研究者は、実験的な手法によって、ネット広告は候補者の知名度アップにも好感度アップにもほとんど効果がないことが示したのだ。 

 

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Facebookに広告を打つ

 

 研究者らは、知名度のあまりない州議会議員選挙の候補者と知名度のある下院議員選挙を対象にした二つの実験を行った。

 

 どちらの選挙でも、Facebookに候補者の選挙広告を配信し、特定の有権者にネットを通じた選挙広告を体験させている。1週間の広告配信ののち、配信した地域と配信していない地域の有権者に電話し、「広告を覚えているか」「候補者の名前を認識しているか」「候補者の評価」を調査した。

 

 

広告はほとんど効果がない

 

 実験の結果、Facebookの広告は有権者の候補者に対する意識をほとんど変えていないことが明らかになった。広告を体験した地域の有権者は、広告を覚えている割合は若干高い場合もあった(候補者の知名度高い場合)が、候補者の認知度や候補者の評価には差がなかった。

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 reference: [フリー写真] 頭を抱えるビジネスマンでアハ体験 - GAHAG | 著作権フリー写真・イラスト素材集

広告にはほとんど効果がないが、それで良い

 

 この実験が示しているのは、ネット広告には検出できるほどの効果はなかったということだ。ではなぜ、世界じゅうの選挙陣営はネット広告に膨大な予算を投じているのだろうか。

 

 研究者らは、ネット広告は他の選挙広告に比べ、一人当たりの費用が極端に安いことに注目している。今回の数百人規模の実験で検出できないような微妙な効果(例えば、1万ドルで0.01%の得票率の増加)であっても、大規模に展開すれば、全体としての効果は期待できるかもしれない。1万ドルで0.01%でも、500万ドル使えば5%の得票だ。

 

 つまり、このような数百人レベルの実験ではほとんど検出できないレベルの効果であっても、膨大な予算をかけて展開した大量にネット広告では効果があるかもしれないという解釈だ。

  

日本のネット選挙解禁は何をもたらすか 

 

我が国においても、ネットを使った選挙活動が一部解禁された。このネット千四の解禁によって、一部では選挙費用が安く済むとの予測がなされている。

 

しかし、とくに“効果がほとんどない”ネット広告では、薄く広く、大量に展開することが求められる。他国とくにアメリカや韓国の事情を見る限り、ネット広告の利用によって全体の選挙活動費用は安くなることはなさそうだ。

 

参考資料:Do Online Advertisements Increase Political Candidates' Name Recognition or Favorability? Evidence from Randomized Field Experiments - ProQuest