選挙解体新書

選挙の役に立つ研究・分析を紹介します。

EU離脱は「風」のせい?選挙当日の風速が投票結果に影響した。

 

 

「風」は選挙の比喩によく使われる。

  

 与党に追い風が吹いた、無党派層の風を読む、政権に逆風が吹いた、などなど。だがしかし、「風」が本当に選挙の結果を左右するとは、誰も考えていなかった。

 

 ケンブリッジ大学とコロンビア大学の研究者が発表した最新の研究によると、風は本当に選挙に影響しているようだ。もちろんここで言う風は、比喩としての風ではない。

 

 風の強さ、「風速」のことだ。

 

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  Columbia Business School Research Paperに発表された論文によると、風速が強いときと弱いときで、有権者は投票先を無意識に変えてしまう傾向があるという。

 

 では、風はどのように投票先を変えるのだろうか?

 

 

天気は人間の行動に影響を与える

 

 人間の様々な選択は、無意識にその日の天気に影響を受けてしまうことが知られている。それが、人生にとって大事な選択であってもだ。

 

 例えば、難関大学への入学を検討している学生は、大学を見学した日が曇りの日だった場合に、入学を決意することが多いことが知られている。

 

 また、金融の世界では天気と株価の値動きには一定の関係があることが知られている。2003年に発表された論文では、世界の主要26都市の天気を元に、1982~1997年の平均株価の日ごとの収益率を集計し、「晴れの日は株価が上がりやすい」事を実証している。

天気は株価に影響を与えるのか?〜傾向から見える意外な結果〜 | ZUU online

 

 しかし、まさか天気が投票先を変えてしまうとはだれも考えていなかった。

 

 

風が強いとリスク回避型になる?

 

 研究者らは、人間の意思決定のうち、損失回避型(予防焦点)と利得指向型(促進焦点)のふたつの志向性に注目した。これは簡単に言うと、リスクをとって現状を変えるか、リスクをとらずに現状維持のままが良いかという選択の違いだ。

 

 そして、風の強さがこの2つの選択に影響するのではないかと研究者らは考えたのだ。というもの、強い風の中を歩いた人は不快さと危険性を無意識のうちに感じており、そのような経験をした人は、そのような経験をしてない人よりも、損失回避型の方に傾きやすいはずだと予想したのだ。

 

風が強い選挙区は現状維持が多かった

 

 研究者らはこの予想を検証するために、2択を迫られるような最近の選挙(EUからのイギリス脱退選挙、スコットランド独立の住民投票)のデータに注目し、各選挙区の気象条件とその地区の選挙結果との関連を調べた。

 

 その結果、驚くべきことに、選挙当日の風速は、その地区の有権者の投票結果に影響していることがわかった。選挙当日に風が強かった選挙区ほど、EUから脱退しない選択をしやすい傾向があったのだ。つまり現状維持の投票をしやすかったのだ。なお、選挙に影響を与えそうな社会・経済的な他の指標(収入や失業率など)を考慮した場合でも同じ結果が得られている。

 

 同じように、スコットランド独立の住民投票でも、風が強い選挙区ほど、独立反対へ投票した人が多かったことがわかった。どちらの選挙結果も、風が強いと現状維持に投票しやすくなるという予測と一定する。

 

 

雨や曇りは?投票率には影響する?

 

 研究者らは続いて、風の強さそのものが影響したのか、雨や晴れなどの気象条件も影響したのかを詳しく調べた。その結果、雨・晴れには関係なく、風の強さのみが選挙結果に影響したことがわかった。

 

 また、風の強さが投票率に与える影響も調べているが、投票率には影響がなかったようだ。

 

 

米大統領選やスイスの国民投票でも同じ結果が

 

 さらに研究者らは、アメリカ大統領選挙とスイスの国民投票の過去50回の選挙結果を分析し、風の強さが有権者の投票先に与える影響を網羅的に調査した。

 

 すると、やはり、選挙当日に風が強ければ強いほど、その地区の住民は現状維持を志向する候補者に投票しやすいという結果が出た。

 

 これは、アメリカ大統領選挙でも、スイスの国民投票でも同じ傾向だった。

 

 つまり、選挙当日の風の強さは、世界中の選挙に影響している可能性があるのだ。

 

 

風は「どれくらい」影響するのか

 

 風が選挙結果に影響することはわかった。ではどれくらい影響するのだろうか。

 

 研究者らは、イギリスのEU離脱選挙の解析結果をもとに、風速の影響を試算している。

 

 それによると、EU離脱の選挙時に風速5mだったBriton選挙区が仮に風速7.5mだった場合には、EU残留へ投票する人が17万5000人増え、その割合は48.11%から48.63%に増加したはずだと予想している。

 

 

これは、小さいけれども無視できない影響だと言えるだろう。

 

 

選挙当日の風が、国の行く末を左右しているのかもしれない。

 

 

参考資料:

Jachimowicz, Jon M., Jochen I. Menges, and Adam D. Galinsky. "Weather Affects Voting Decisions." (2016).

 

 

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