選挙解体新書

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USA!USA! 国旗を見た国民は、無意識に投票先を変えてしまう

 

 あなたがなんとなく決断したことが、実は他人にコントロールされた結果だとしたらどう思うだろうか。陰謀論じみて聞こえるかもしれないが、われわれの意思決定や行動は関係のない先行情報に大きく影響を受けていることがわかっている。

 

 例えば、老人に関連する単語を含む課題に回答した実験参加者(大学生)は、老人とは無関係な単語を用いた課題に回答した参加者に比べ、実験終了後に廊下を歩く際の歩行速度が遅くなることが示されている。

 

 このような、ある刺激を目にし、その刺激から特定の固定観念(上の実験の場合、老人)を想起することが、その後の行動に無意識に影響を与えることをプライミング効果と呼び、心理学はじめさまざまな分野で精力的に研究されている。

 

 実は、プライミング効果は、投票行動にも存在することがわかっている。つまり、あるモノを見ることで、有権者の投票行動が無意識に変化してしまっている可能性があるのだ。

 

目にするだけで投票先が変化するモノ、それは国旗だ。

 

 

 

サブリミナルな国旗が、投票先を変える

 

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/2/2c/Flag-of-Israel-4-Zachi-Evenor.jpg/220px-Flag-of-Israel-4-Zachi-Evenor.jpg

 イスラエル・ヘブライ大学の研究者らは、国旗を目にすることが投票行動にどのように影響するかを調べた。この研究で注目すべきは、国旗を16ミリ秒、つまり0.016秒しか被験者に見せていない点だ。つまり、被験者は国旗を目にしているが意識していないのだ。つまり、サブリミナルな刺激である。国旗を一瞬だけ見せられた被験者の投票行動はどのように変化するだろうか。

 

 実験の手順はこうだ。まず、愛国心スコアの高い保守的グループと愛国心スコアの低いリベラルグループに分けられた。その後、半数の被験者はイスラエルの国旗を、もう片方はイスラエルの国旗をパーツを元に作られた国旗ではない図形を、0.016秒提示された。その後、パレスチナ問題に関わるアンケートを実施し、政治的なスタンス(保守的かリベラルか)を評価された。

 

 その結果、国旗は政治意識を「中庸」に変化させた。つまり、保守的なグループはよりリベラルよりに、リベラルグループはより保守的になったのだ。さらにこの研究では、国旗の提示が、実際の投票行動も、中道に変化させる効果があることも示している。研究者らは、イスラエルにおいて国旗は団結の象徴であるため、有権者を中庸に向かわせる結果なったのではないかと考えている。

 

 

国旗は共和党支持を増やす@USA

 

 国旗が持つイメージは国によって違っている。特に共和党と民主党の二大政党制をとるアメリカ合衆国では、国旗は共和党のイメージと強く結びついている。

 

 シカゴ大学の研究者らは、アメリカの国旗を目にすることが「共和党」への支持を増やす可能性を報告した。研究者らは、インターネットを用いた調査を行い、国旗を目にすることが、政治的な態度や投票行動に与える影響を調べたのだ。このとき、半分の被験者には、左上の隅に小さな国旗を配置した画面を提示し、半分はなにも提示しないという処理を行っている。

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/9/9b/US_Flag_Backlit.jpg/800px-US_Flag_Backlit.jpg

 

 

 小さな国旗は、重大な影響をもたらした。国旗を見たグループは、そうでないグループよりも、共和党の候補(ジョン・マケイン)への評価が高くなったのだ。また実際の投票行動も変化した。国旗をみなかったグループのうちマケインに投票したのは16.5%だったのに対して、国旗を見たグループでは27.2%だった。

 

 信じがたいことかもしれないが、この効果8ヶ月後も続いていた。8ヶ月後、選挙に勝った民主党オバマ大統領の実績を評価するアンケートを実施したところ、国旗をみたグループは、見なかったグループよりもオバマ大統領へ有意に低い評価を与えていたのだ。

 

 なぜイスラエルでは“団結”の効果が見られた国旗であるが、アメリカ合衆国ではむしろ逆の効果をもたらしているように見える。研究者らは、特に2大政党制のとき、片方が国旗と結びつきやすいブランディングをしているときには、国旗は団結よりも片方の政党への指示に偏らせてしまう効果があると考察している。

 

 

 日本国旗の効果は?

 

 さて翻ってわが国ではどうだろうか。

 

 主要政党の党大会の写真をみると、自由民主党・民進党などは国旗を掲げている一方、共産党・社民党などは国旗を正面に掲げている写真は非常に少ない。

 

 推測するには情報が少なすぎるかもしれないが、政党によって国旗イメージとの結びつきは違っているだろう。そのため、日本においても、有権者が国旗を目にすることが投票先の選択になんらかの影響を与えているかもしれない。

 

 日本では公民館や体育館などが投票場所に使われることが多い。場所によっては、国旗が掲示されている投票所もあるかもしれない。もしかすると、国旗が掲揚されている場所では、有権者の投票行動が無意識に変化させられているかもしれない。

 

 

参考資料

Hassin et al. Subliminal exposure to national flags affects political thought and behavior

Carter et al. A single exposure to the American flag shifts support toward Republicanism up to 8 months later

 

 

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